2022年度ワークショップ(第7回)講演資料集

はじめに

 先端エネルギー材料理工共創研究センター(E-IMR)は、理学と工学とを融合した「理工共創」の研究を協力推進することにより、スピン、電子、イオン、ホール、フォトン等の多様なキャリアを原子レベルで制御した先端エネルギー材料の創成に取り組んできました。エネルギー問題と地球温暖化・気候変動問題は、その課題解決の重要性がさらに高まりつつあります。第4期中期目標・中期計画が始まる今年度から組織の拡充・強化を図り、太陽エネルギーの利用と3つの「蓄」の最大化に貢献する革新的エネルギー材料と複合モジュール創製に向けた4つの研究ユニット体制に再編し、金属材料研究所のみならず本学他部局の研究者にも新たにご参画いただいております。

  具体的な研究ユニットとそれぞれの研究ターゲットは以下の通りです。

  1. 太陽エネルギー変換材料研究ユニットでは、太陽エネルギーを高効率で光励起変換・熱電変換する材料の開発を目指します。新概念の変換機能を持つエネルギー材料の実現を目指して、スピン流を介したエネルギー変換に関する学理の追求、太陽電池用多結晶材料の高品質化、ペロブスカイトなどの新規太陽電池などのハイブリッド化に関する研究の推進、太陽エネルギー利用の最大化の鍵ともなる熱電変換材料の開発および熱を貯める蓄熱材料との組み合わせにより、より効果的な蓄熱熱電変換システム構築を目指します。
  2. 蓄エネルギー材料研究ユニットでは、次世代革新蓄電池・蓄水素および水素高度利用・蓄熱などの蓄エネルギー材料の開発を目指します。太陽エネルギー電気変換後のエネルギー貯蔵を考えるには、蓄電池および水素変換が必要であり、本ユニットでは、蓄エネルギーデバイスのポストリチウム候補として多価イオン電池材料の開発を行い、水素変換・貯蔵・利用にかかわる研究開発を積極的に推進します。
  3. 材料評価解析研究ユニットでは、エネルギー材料の原子構造および電子構造などの計算科学・マテリアルDXによる評価および高度解析技術の適用を目指します。材料評価・解析研究では、高性能な観察・計測装置で実施し、取得したデータのデジタル化およびAI解析技術を駆使して、材料設計に資する評価法を確立します。
  4. 複合モジュール・社会実装研究ユニットでは、エネルギー材料の高性能化を目指したプロセス開発および複合デバイスの社会実装を目指します。学術的な材料研究を実施するだけでなく、社会実装に向けて企業や自治体と共同して研究に取り組み、先端エネルギー材料を基盤とした新しいエネルギーシステムの構築に貢献します。

 理学系および工学系研究者によって構成された各研究ユニットでは、エネルギー材料分野での研究フロンティアを開拓して世界最高水準の材料研究を推進するとともに、異分野融合に関する高度な研究能力をもつ若手人材の育成として今年度3名の特任助教を採用しました。また、本学工学研究科や材料科学高等研究所、国際放射光イノベーションセンター(SRIS)等をはじめとする学内外研究組織の教員・研究者の参画(頭脳循環)によって、これまで金研でカバーしていない領域の研究を進め、カーボンニュートラルに向けた太陽エネルギー利用グリーンエネルギー社会の構築に貢献します。

 今回のワークショップは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、講堂でのオンサイト参加とZoomウェビナーによるウェブ参加というハイブリッド形式で最新の研究成果の一端をご紹介させていただきます。先端エネルギー材料理工共創研究センター(E-IMR)への今後のご支援・ご鞭撻のほど、心よりお願い申し上げます。

令和 4(2022)年 12月

                                                                           先端エネルギー材料理工共創研究センター

                                                                           センター長 市坪 哲

講演資料

  1. カーボンニュートラルの実現に向けた大学等への期待
    • 文部科学省研究開発局環境エネルギー課長 轟渉氏
  2. 多元素組成空間における材料探索ー環境調和型熱電材料の開発に向けて
    • 茨城大学理工学研究科 池田輝之教授
  3. 先端エネルギー材料理工共創研究センターの概要
    • 先端エネルギー材料理工共創研究センター長 市坪哲センター長
  4. 半導体バルク材料の結晶成長
    • 太陽エネルギー変換材料研究ユニット長 藤原航三教授
  5. 太陽電池の高効率化に向けた結晶成長研究:CdTe多結晶とコロイド結晶の成長制御
    • 太陽エネルギー変換材料研究ユニット 野澤純特任助教
  6. 高温水蒸気電界による水素製造のための材料開発
    • 蓄エネルギー材料研究ユニット 高村仁教授
  7. 多価カチオンを利用した金属負極蓄電池開発
    • 蓄エネルギー材料研究ユニット 李弘毅特任助教
  8. 単色・白色中性子を活用した物性材料研究
    • 材料評価・解析研究ユニット長 藤田全基教授
  9. 放射光顕微分光イメージング計測技術の開発とエネルギー材料解析への応用
    • 材料評価・解析研究ユニット 高橋幸生教授
  10. Mechanically Robust Self-Organized Crack-Free Nanocellular Graphene Prepared by Liquid Metal Dealloying
    • 複合モジュール・社会実装研究ユニット長 加藤秀実教授
  11. Ultrafine Porous Intermetallic Compounds Fabricated by High-Temperature Liquid Metal Dealloying for Electrochemical Hydrogen Production
    • 複合モジュール・社会実装研究ユニット 宋端端特任助教