発表のポイント
- 二酸化炭素の吸着により、磁気相転移温度が大きく向上する分子性多孔性材料の二次元層状分子磁性体(多孔性磁石)を見出し、その相転移温度向上の機構を明らかにしました。
- ガス吸着による局所的なゆらぎの制御を磁気挙動で実証した例は世界初です。
- 化学的刺激により駆動する分子デバイスの新たな駆動原理として期待されます。
概要
磁石(磁性体)は家電製品や電気自動車からハードディスク等、身の回りで様々に用いられ、よく知られた材料です。磁性体の相転移温度低下は、時として熱運動による構造ゆらぎや電荷ゆらぎの「欠陥」によりもたらされ、それらを修復することは非常に困難です。
東北大学金属材料研究所の高坂亘 准教授と宮坂等 教授の研究グループは、大阪大学大学院基礎工学研究科の北河康隆 教授の研究グループおよび中国の武漢大学の張俊 教授との共同研究により、磁気秩序に不利に働く局所的な電荷ゆらぎをもつ多孔性層状分子磁性体について、二酸化炭素の層内への挿入による電荷ゆらぎの抑制により、磁気相転移温度が大幅に上がることを見出しました。またこの相転移温度の変換は二酸化炭素の吸脱着により可逆です。
本材料のようにガス(二酸化炭素)吸着による局所ゆらぎの抑止(欠陥修復)に基づく磁気相制御は世界初です。
構造と電荷、スピンの相関についての基礎学問の解明のみならず、化学センサーや化学磁気スイッチなどの化学的刺激により駆動する分子デバイスの新たな駆動原理として、今後の発展に興味がもたれます。
本研究成果は、2023年10月15日付け(現地時間)でドイツ化学会誌 Angewandte Chemie International Editionにオンライン掲載(Early View)されました。
詳細
- プレスリリース本文 [PDF: 1.3MB]
- Advanced Optical Materials [DOI: 10.1002/anie.202312205]
図. 電荷ゆらぎをもつ分子性多孔性材料へのCO2の吸着による物質変化の模式図(左図)と磁気相転移温度の変化(右グラフ)
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