東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター髙橋幸生教授(E-IMR材料評価・解析研究ユニット)テンダーX線タイコグラフィで世界最高の空間分解能を達成 ~3GeV高輝度放射光施設NanoTerasuを用いた初の学術論文~

投稿者: | 2024年8月8日

 概要 

 2024年4月より東北大学青葉山新キャンパスに整備された3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」の運用が開始されました。NanoTerasuは大型放射光施設SPring-8(注2)と比べて、低エネルギーのX線(注3)である軟X線やテンダーX線の輝度(注4)が高く(明るく)、様々な放射光計測技術の性能向上が期待されています。
 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(金研E-IMR材料評価・解析ユニット)の高橋幸生教授、石黒志准教授、高山裕貴准教授、星野大樹准教授、吉田純也准教授、日本学術振興会特別研究員の阿部真樹博士、住友ゴム工業株式会社の金子房恵博士(東北大学 多元物質科学研究所 助教)と岸本浩通博士、東北大学 サイバーサイエンスセンターの滝沢寛之教授と高橋慧智助教らの共同研究グループは、干渉性(コヒーレンス(注5)に優れたX線を用いて物質の微細構造を高分解能で観察する「X線タイコグラフィ(注6)」の計測をテンダーX線のエネルギー領域で実施可能なシステムをNanoTerasuのX線コヒーレントイメージングビームラインにおいて構築しました。そして、スーパーコンピュータAOBA(注7)を活用した解析によってタンタル製の空間分解能テスト試料の観察で20 nm未満の優れた空間分解能を達成しました。また、リチウム硫黄電池正極材として開発された軽元素材料の含硫黄高分子粒子内部の微細構造を50 nm未満の分解能で観察することに成功しました。本システムを改造することで10 nm未満まで分解能を向上させられることが見込まれます。
 今後、本システムを用いて、動作中のリチウム硫黄電池やタイヤゴムの計測・解析に応用することで、これまで不明瞭だった劣化メカニズムの解明および性能向上への貢献が期待できます。また、厚みをもった細胞の観察など生物分野への応用も期待されます。
 本研究成果は、2024年5月7日(英国時間)付で、応用物理学会の学術誌Applied Physics ExpressにAccepted Manuscriptとして掲載されました。また、掲載論文は同誌の“Spotlights”論文として選ばれました。

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※NHKホームページでも紹介されました。こちら